『グラスホッパー』 鈴木と愉快な裏社会の人たち
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2007/06/23
- メディア: 文庫
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内容
妻を殺され、復讐のために裏社会に身を投じる鈴木。
過去に殺した人々の幻覚に苦しめられる自殺専門の殺し屋「鯨」。
こき使われている現状に不満を抱く、ナイフ使い の殺し屋「蝉」。
三人がそれぞれの思惑で、「押し屋」という殺し屋を追う。
ジャンルはサスペンス、なのかな??
読んだ理由
kindleでセールしてたのと、映像化もされたし有名だから読んでみよう。
ネタバレなし感想
めっちゃおもしろかった。
展開が早く、状況が目まぐるしく変わるので、どうなるのどうなるの!?と気になって一気に読んでしまった。
三人の主人公がそれぞれの思惑で動いているのに、思わぬところでつながったり、関連があったりして、驚く箇所がいくつもある。故に飽きない。
裏社会を舞台にしているので、暴力沙汰は日常茶飯事。
なので、生きるか死ぬかの展開にもハラハラ。
続きで、ネタバレあり感想。
ネタバレあり感想
結局、鈴木以外、裏社会の人だった、という。
最初に拉致した男女でさえ。
結局は、鈴木が一人でテンパッてました、ちゃんちゃん。
鈴木がいなくても、鯨も蝉も寺西も死ぬし、槿は助かる。
鈴木がいても、この物語の結果は何も変わらなかっただろう。
この話で面白いと思ったのは、主人公の一人である鈴木が、結局は物語的にはいらない子だった、というところだった。
物語的にはいらない子だった鈴木だけど、鈴木自身はとても変わった。
裏社会という舞台から降りることができた。
亡き妻の言葉を思い出して、バイキングでドカ食いをして、全てのものを消化しながら生きると誓うことができた。
舞台から降りていない少年たちの心を、少しでも癒すことができた。
物語には、裏社会には、なんら関係ない。
そんな少しの、些細な変化が、さわやかな気分にさせてくれた。
蝉と鯨
そんなわけで主人公の中で一番印象深いのは鈴木であり、どうしても殺人を犯している蝉と鯨はぐっと共感することが難しかった。
蝉は戦闘力が高い描写がかっこよかった。
岩西との関係はじんわりした。
鯨は感情がないような人物にみえるが、幻覚がおしゃべりなところから、葛藤や罪悪感に苛まれている人物というギャップが面白かった。
まとめ
鈴木と愉快な裏社会の人たちのお話。
鈴木くんの成長物語…といえなくもない?