”自分の”読書感想文

既婚子持ちのIT系OLの本の感想ブログ。自分が感じたことを正直に書く、自分にしか書けない自分の読書感想文。

『和菓子のアンソロジー』 おいしいお話に出会えるアンソロジー

 

和菓子のアンソロジー (光文社文庫)

和菓子のアンソロジー (光文社文庫)

 

 

内容

和菓子をテーマにしたアンソロジー。

 

読んだ理由

以前「和菓子のアン」という小説を読んで、その続編が入っていると聞いて。

「和菓子のアン」を読んだとき、和菓子がとても食べたくなったので、今回もそれを期待。

 

ネタバレなし感想

和菓子のアン同様、読後は和菓子が食べたくなる!

各作品、舞台や主人公や文体、和菓子の扱い方が違っているのが楽しい。

作品によっては、和菓子あんまり意味なくない?というのがあって残念。

 

「和菓子のアン」の続編目当てに購入したが、お話自体は普通。

アンちゃんと立花さんのほんわかする関係性を感じれたので、よし!

 

好きな作品は、

行きつけの和菓子屋の娘の失踪の謎を解く刑事のお話「トマどら」

亡き夫が黄身しぐれという和菓子の包み紙に残した俳句の謎「しりとり」

この二つ。

どちらも、和菓子がとてもおいしそうなのと、そのお菓子がお話にとってとても重要な役割を果たすところが好き。

時に「トマどら」に出てくるフルーツが入ったどら焼きがおいしそうでおいしそうで、実際に食べてみたいと思った。

以下、おいしそうなどら焼きの描写の一部を抜粋。

 

餡と果物を挟んだどら焼きは、ふっくらと厚みがある。

あえて手で割らずにかぶりつくと、柔らかい皮と小豆餡の次に、一瞬だけ飴のぱりぱりとした食感が来る。

直後に餡に閉じ込められていた果物の酸味のあるみずみずしい果汁が溢れ出るのだ。

 

ああ~~~~おいしそう!

おいしそうな描写はもっとあるので、ほんと好き。

 

 

和菓子が好きな人にはぜひおススメの作品集。

同じく「和菓子のアン」もおススメです。

 

和菓子のアン (光文社文庫)

和菓子のアン (光文社文庫)

 

 

和菓子のアン 1 (花とゆめCOMICS)

和菓子のアン 1 (花とゆめCOMICS)

 

 

 続きで全作品のネタバレあり感想。

 

 

 

空の春告鳥

和菓子のアンの続編。

飴細工の鳥という言葉の謎を解いていくお話。

特に大きい出来事がないので、とても面白いわけではないが、アンちゃんと立花さんのデート(?)がほっこりして好き。

 

トマどら ←好き

行きつけの和菓子屋の娘の失踪の謎を解く刑事のお話。

和菓子屋を継いだ真面目な長女と自由奔放な妹の対立と和解を、どら焼きで表現しているのがスマートだなと思った。

ネタバレなし感想でも書いたけど、どら焼きの描写がほんとうにおいしそう!

姉妹の和解の証であるトマトの入ったどら焼きもすごく食べてみたくなった。

 

チチとクズの国

自殺しようとする青年と、亡霊の父のお話。

三途の川の葛でできているという表現が面白い。

父のことに反発してしまう主人公の潔癖さはわからないでもない。

最後は主人公と父との関係も、主人公の心もよくなってほっこり。

 

迷宮の松露

迷える女子がモロッコでおばあちゃんの事を思い出すお話。

不恰好な茸を模したお菓子に、完璧だと思っていたおばあちゃんを重ね合わせ、コンプレックスを消化する様がよかった。

松露ってお菓子を私は知らなかったのですが、おいしそうですね。

 

中森 松露 220g

中森 松露 220g

 

 

 

融雪

レストランを経営する女性が主人公だが、お客さんの男性と元恋人の芸能人の女性の恋愛話がメイン。

登場する和菓子は淡雪寒・牛乳寒だが、それ含めて料理の描写が多くとってもおいしそう!

ランチプレートが食べてみたい!

若いころはかっこつけちゃったけど、牛乳寒のような素朴なものも愛おしいよね。 

 

糖質な彼女 ←一番イマイチ

統合失調症の女の子が出てくる話。

精神病の人が和菓子を作る場面があるけど、和菓子である必然性が感じられない。粘土でいい。

糖質って言いたかっただけ感。

 

時じくの実の宮古

異常気象で熱帯のようになった日本で、旅をする父と息子のお話。

世界観に馴染むのが大変で、シーンのイメージがしにくかったが、馴染んでくると個性的で好き。

親子が和菓子を作りあって、勝負する様は楽しかった。

熱帯で群生するフルーツを使った和菓子が個性的。

おっぱいに見立てた「拭い白花」、食べた後に物足りないなぁというむなしさを感じさせるキウイを使った「遠山餅」が印象的。 

和菓子の名前もいいですね。

 

古入道きたりて

山奥で見た不思議な光景を、戦場から帰ってきた男は再び見るため足を運ぶお話。

古い日本の湿度のある世界観が、読んでるこちらもその不思議な光景を見た感じにさせてくれる。

出てくるお菓子おはぎは、山奥に住む老婆が振舞ったものであり、洗練されてない感じだが、それがまたおいしそう。

 

しりとり ←好き

亡き夫が和菓子の包み紙に残した俳句の謎を説くお話。

またその俳句が、妻と出会ったときのことや、妻への愛が詰まっていて、とてもあったかい気持ちになる。

登場する黄身しぐれという和菓子が俳句のキーにもなっているし、やさしい食感なのもこのお話にとても合っている。

 

甘き織姫

コミュ力低いお友達が、好きな女性に和菓子を送って気持ちを伝えたら、和菓子で返事を返された。その返事の真意を探るお話。

和菓子の使い方がおしゃれ。

それよりも、キャラクターが面白くて、主人公たちとコミュ力低い友達との友情のありかたが、男子らしくてよかった。

 

まとめ

おいしい和菓子があるように、おいしいお話に出会えるアンソロジー