『結婚しなくていいですか。―すーちゃんの明日 』 将来について少し安心できる、優しいおはなし
内容
このまま結婚もせず子供も持たずおばあさんになるの?
スーパーで夕食の買い物をしながら、ふと考えるすーちゃん36歳、独身。
ヨガ友達のさわ子さんはもうすぐ40歳。
寝たきりの祖母と母との3人暮らしで、13年間彼がいない。
恋がしたい。いや、恋というより男が欲しい。
女性の細やかな気持ちを優しく掬いとる、共感度120%の4コマ漫画。
Amazonの紹介文から引用。
読んだ理由
以前、同じ作者「益田ミリ」さんの漫画を読んで、もっと読んでみたくなりました。
本屋で文庫になった今回の本を見かけたので購入しました。
感想
軽やかさと重さの同居
リアルな悩みを、深刻さを感じさせずにさらっとさりげなく、そして優しく描いている。
さーっと短時間で読めるけれど、心に残るものは多いと思いました。
この軽やかさと重さの共存は、この絵、この間合いだからこそ。
将来(主に老後)に対して気が楽になった
主人公のすーちゃんが将来や老後について考えるシーンが多々あります。
それがとっても共感できるし、不安になっているのは自分だけじゃないんだ、という安心感がありました。
遠い未来確実にやってくる老後、そしてそれがどれほどの大変さか分からない。
そのため、深刻に悩むのではなく、心のどこかでもやもやとしてある感じ。
その、細かいニュアンスが描かれているのがすごいと思いました。
特にぐっと来たところ
すーちゃんが、自分がおばあちゃんになったことを考えていて「寝たきりなんて絶対やだな~」「元気で長生きがいちばん」と言った後。
「寝たきりになりたい人なんていない」と気づき…。
わたしも言っちゃってますね。
「寝たきりはやだな~」って。
なので、ハッとさせられました。
まとめ
主に30、40代の女性がかかえているもやもやが詰まっているので、その年齢の人におススメ。
旦那さんもおもしろいと言っていたので、男性でも楽しいかも。
将来について少し安心できる、優しいおはなし。
『ぼーっとしている人が「自分の人生と向き合う」ためのQ&A30』 具体的で優しい解決方法を示してくれる人生相談
内容
主に家庭内トラブルに関する記事を書かれている斗比主閲子(トピシュ エツコ)さんの人生相談の本。
この本は、次の項目のどれかに当てはまる人のために書きました。
・一年以上不倫をしていていつか結婚できると信じている人
・結婚さえすれば幸せになれると思っている人
・待っていればいつか仕事も人間関係も上手くいくと考えている人
・嫌いな友達や家族が多い人
・親はいつまでも健在だと信じている人はっきり言えば、人生をぼーっと生きている人です。ぼーっと生きていけること自体は大変幸せなことですが、残念ながら人生でぼーっと生きていける時間はそれほど長くはありません。後になって、「あの時、こうしておけば……」と悔やむことは多々あります。そうならないためのノウハウをこの本には詰め込みました。……
紹介文からの引用です。
具体的にどんな質問に回答しているか、一部抜粋しました。
人間関係
- 嫌いな同僚の結婚式に出たくない。
- 義理の両親が子供の名づけに口を出してくる。
- DV被害者の友達に私ができることは。
男女
- どうしたら恋人ができるか。
- 会話がもりあがらない。
- 恋人や配偶者と元どおりに仲良くなりたい。
心理
- 周りにイライラする
- 将来に対して漠然とした不安が消えない
- 愛とはなにか
仕事・お金
- 手に職を持つとはどういうことか
- お金を貯めるには
- 専門学校に行きたいという子供の進路が不安
などなど。
読んだ理由
最近、斗比主さんのブログを読むようになりました。
人生相談の回答が凄く納得できるものが多かったし、面白かったので、電子書籍も購入。
300円とお手軽価格だったのも購入の決め手。
感想
具体的な解決方法が示されていて納得感あり
自分はわりとぼーっとしてない側かな、と自負しちゃってますが、とても為になる本でした。
難問多数のQ&Aですが、丁寧かつ具体的に、時にはデータを活用しながらも解決方法が示されており納得感がありました。
また、回答が優しい。
質問者の考えがおかしい場合でも、なぜおかしいかを丁寧に解説しており、質問者が不利益を蒙らないように答えていました。
回答者の我というかキャラが前面に押し出されたQ&Aも楽しいんですけど、ちゃんと問題を解決しようという内容がよかったです。
特に印象深かったQ&A
1つだけご紹介。
Q:母子ともに仲がよいママ友が、デモに誘ってきたり、子供に予防接種を受けさせない方がいいと言ってきたりしている。どうしてこんなことを言うようになったか。
A:育児不安によるものです
回答では「不安感が大きすぎると、人間は合理的な判断ができなくなる。反論や説得をしたくなる気持ちがあるが、そのママ友の不安感にできるだけよりそってあげるのがおススメ」とありました。
加えて、私はこの回答がとっても心に響きました。
忘れてはいけないのは、このママ友さんが特別だと思わないことです。
誰でも不安やプレッシャーで押しつぶされそうになると、これまで違う行動をするものです。
人によっては鬱など病気になることもある。
自分自身も例外ではありません。
私は質問だけ見たときは「やべぇママ友だ。近づかない方がいいんじゃない。」と思ってしまいましたが、悔い改めました。
そのママ友の不安にも気づかなかったし、そのママ友と自分はまったく別次元の存在だと思っていました。
自分自身も子育て中でもあるので他人事は思わず、また悩みを抱えている人の不安に寄り添えたらと思いました。
他、心にぐっと来た回答
- 会話が盛り上がらないと悩む人は多いので、みんな盛り上がる会話をしていないので、そんなに気にしなくてよい。
- 結婚に価値があるのでなく、二人で一緒に問題に取り組んできた経験が何物にも代え難いもの。
- 人間関係は何も言わないですれ違うことが本当に多い
- 不安という感情は誰もが抱くもの。不安があること自体は問題だと心配しなくてよい。
あと、回答とは違うんですが、今って3組に1組が離婚しているんですね。
多いな~~~~。
まとめ
悩みがある人、困ったことがある人におススメ。
自分の問題に近い質問がきっとあります。
そして、具体的で優しい解決方法もそこにはあります。
『火車』 心に様々な色の泥が徐々に溜まっていくのを感じる話
内容
舞台は90年代の日本。主人公は足に怪我を負い、休職している刑事。
親戚の男性から頼まれて、失踪した彼の婚約者、関根彰子を探すことになった。
自ら失踪した彰子の足取りを追っていく中で、借金の犠牲者たちの凄惨な事実に辿り着く。
読んだ理由
宮部みゆきの作品をもっと読んでみたいと思い購入。
前に読んだ『魔術はささやく』がとっても面白かったので。
感想
面白かった!
読み進めるのと同時に、心に様々な色の泥が徐々に溜まっていくのを感じる、そんな小説。
すっきり、感動したい人へはおススメできない小説だが、重い話が好きな人にはおススメ。
紹介文には「ミステリー史に残る傑作」とあったが、私は人間ドラマの方が印象深かった。
登場人物それぞれに生活があり影がある
怪我をし休職中の刑事であり、息子・智と二人で暮らす寡夫の主人公本間。
失踪した関根彰子の婚約者で、冷たい印象を受ける和也。
やさしい家政夫・井坂と、その妻、仕事をバリバリこなす久恵。
のんびりとした真面目な女子事務員みっちゃん。
などなど…多数の人物が登場する本作品。
それぞれが、それぞれの価値観を持ち、それぞれの苦しみや悩みを抱え、それぞれの人生を歩んでいる。
この違いこそが、この話の根幹に関わっており、謎解き以外の小説の魅力となっている。
あまり上手じゃないお話だと、サブキャラ達は情報提供するためだけのNPCっぽく感じるが、それが全然ない。
私が特に心に残ったのは「本田保&郁美」あと「あの人」。
理由は続きのネタバレあり感想で。