『魔術はささやく』 多数の登場人物の思惑が重なる物語
内容
宮部みゆきさんの推理サスペンス小説。
平成元年の作品なので、携帯電話はない現代日本のお話。
相互関係が見当たらない女性三人の死。
その中の一人の女性を轢き殺してしまったタクシー運転手の甥・守は、その女性の死について調べていくうちに、女性三人の死の真相と、四人目に迫る魔の手に気づいていくのであった…。
読もうと思った理由
宮部みゆきさんは有名だけど、ブレイブストーリーをすっごい前に読んだっきりだったので、ブックオフで見かけたこの本を読んでみることに。
すっごい前の作品と知らなかったし、ドラマ版もあることも知らなかったので、先入観一切なしで読むことができました。
ネタバレなし感想
サスペンスものはハラハラドキドキしてこそ、だと思いますが、まさしくその通りのお話で、続きが気になってすぐ読んじゃいました。
登場人物が多く、始めは混乱しましたが、それぞれがキャラが立っていて、主人公に影響を与え、物語が進んでいく様子が楽しかったです。
キャラが立っているというのは、各自がそれぞれの考え方を持っていて、ちゃんと生きている感がありました。
アドベンチャーゲーム「街 〜運命の交差点〜」「428 〜封鎖された渋谷で〜」に似ているなぁ、という印象を受けました。
この二つのゲームは、複数の登場人物の視点でゲームを進め、登場人物の行動が思いがけないところで影響しあい、最後一つに収束されるといったものです。
この小説は守が主人公ですが、他の人物もそれぞれの思惑で行動を起こし、守に対し影響を与えていく様が似ていると感じたところです。
(ちなみに紹介したゲームは2つともおススメです)
続きでネタバレあり感想。
ネタバレあり感想
サブリミナル効果が女性三人の自殺の引き金だったのだー。
けっこうトンデモトリックと思いつつも、物語の中では複線や使い方によってブレがないので違和感なく読めました。
気になる登場人物。
主人公の守。
強い心の持ち主な上に、行動力がはんぱない。
けども悩んだり、謎の電話におびえたり、親の事で悩んだりと、年相応に悩んでいるので共感しやすかった。
最後、吉武に対し自殺を促し、助け、自首を促した決断は、彼の苦しみがみてとれた。
守の家族。
みんないい人すぎる。
叔母さんがわざと明るく振舞っている様子が切ない。
叔父さんがもう運転できないと漏らすシーンと、もう一度運転に携わる仕事をする決意をするシーンは、叔父さんが歩んできた人生を感じさせてよかった。
原沢老人。
あっさりと四人目の殺害を諦める、守に入れ込む、など人間くさいところがあるためか、犯人なわけだけど憎めない。
あねご。
出てくると安心する。守のことすきなんでしょ!!!とニヤニヤした。
高木和子。
なんらか裁かれるといいかな、と思っていたが、あっさりと許された感。
こういう生き方、考え方もあるんだなぁ~と、新鮮ではあったので、そんなに嫌いじゃない。
三田村。
ドン引き過去を持っている高木さんを優しく見守る善人。
すごい善人。
まとめ
多数の登場人物の思惑が重なってまとまっていく物語。
故に展開が読めなくて、ワクワクする。